近くて甘い
第34章 企てとすれ違い
あっ…やっぱり停電なんだ…
廊下も電気が全て消えていて薄暗い。
「これは、この会社だけじゃなくて、この辺一帯がそうなっているんですかね?」
「うん…どうなんでしょう…今酒田に電話してみます。
危ないですから、真希さんはあまり動かないようにして下さい」
「はい」
言われた通り、その場で立ったままでいると、要さんは電話片手にどこかへ行こうと左右を見渡した。
色々な方面から、慌ただしそうな声が聞こえてきて何だか焦ってくる。
何でもないといいんだけれど…
「ダメだな…通話中だ…」
「酒田さんはこの会社内にいるんでしょうか…?」
「そのはずです。今日は社長がここにいるので。秘書が社長と全く別の場所にいるという事はないかと…」
要さんが、私にそう説明していた丁度その時だった。
遠くの方から、見覚えのある人が勢いよく走ってくる。
あれは…
「酒田さん…?」