近くて甘い
第34章 企てとすれ違い
私の視線の先をみた要さんは、あぁと声を出して、酒田さんを見た。
「関根さんっ…」
「どうした、そんなに慌てて…
電話したんだが通話中だったぞ」
息を切らせた酒田さんは、ゼェゼェ言いながら、自分のスマホを要さんに突き出した。
え…?
よく分からずに私と要さんは首を傾げる。
そして画面を見ると、“通話中”となっていた。
「おい…どういうことだ…」
ようやく息を整えた酒田さんは、泣きそうになりながら、私と要さんを見つめた。
「社長がっ……
エレベーターに閉じ込められてしまいましてっ……」
「「 !?!? 」」
光瑠さんがっ…
エレベーターの中にっ…?
「一人でかっ…」
『おいっ…ベタベタくっつくなっ…』
酒田さんの電話から聞こえてきた声に私はハッとした。
『だって怖いんですもんっ…』
これは…女の人の声…
聞き覚えがある…
聞くだけで嫌な気分になるこの声は──
「……そばについていた櫻井 香純さんも一緒ですっ…」
カスミ───…
それってもしかしてっ…