近くて甘い
第34章 企てとすれ違い
「最近やたらと社長の傍についていたあの新入社員か…」
えっ…?
“やたらと社長の傍についていた”…??
『おいっ!酒田っ!聞こえているのかっ…!』
「はっ、はいっ…今関根さんをようやく見つけて──…」
酒田さんの言葉で光瑠さんは何故か黙ってしまった。
不穏な空気が流れて、膠着する。
『───関根を呼べなどとは一言も言っていない…』
「社長…今はつまらない意地を張っている場合ではありません…」
『っ…黙れっ…』
話が読めないまま、私はハラハラしていた。
エレベーターに閉じ込められているだなんて…っ
無事なのだろうかっ…
傍にあの香純さんがいることも気になって、落ち着かない…
「光瑠さんっ…」
堪らず私は電話に向かって声を掛けた。