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近くて甘い

第34章 企てとすれ違い

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聞こえて来たか細い少女の声に、光瑠は電話を持ったまま固まった。



何故真希がいるっ…




『無事なんですかっ…?怪我はっ…怪我はしてないですかっ…?ねぇ光瑠さんっ…』



必死な真希の言葉に答えることが出来ないまま、余計なことが頭を駆け巡る。



昨夜拒まれたことで負った傷は大きい──…



自分の事は嫌だと言いながらも、思わず発してしまった婚約破棄の言葉に、真希は嫌だとは言わなかった。



そして、今…



真希は関根の傍にいる──…




それは自分はやはり選ばれなかったと言う事だ──




「酒田…
早く業者に連絡してここから出せ…」




完全に真希の言葉を無視した光瑠は、それだけ言って、電話を耳から離した。




『っ…いやっ…待って光瑠さんっ…無事なのかどうかだけでもっ…』



『真希さん…落ち着いてっ…』





電話から流れる二人の会話に光瑠は唇を噛みながら、画面をタッチして、電話を切った。



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