近くて甘い
第35章 交わらない想いと出発
初めてここまで、心から笑う副社長を見た───
本当に辛いはずなのに、この人は何て強いんだろう──…
「お疲れさまです…」
「……田部さんのお蔭だ」
バクバクと、やかましい心臓。
目を見開いて、今にも倒れそうな加奈子のことを見て、要はフッと笑いながら、ゆっくりと隣の席に加奈子のことを座らせた。
「すすすすみませんっっ!!私はっ….そんなっ何もしてなくてっ…ですからっ…」
「そうだね…正確には、田部さんのおばあさんのお蔭かな…」
ニヤッと笑った要を見てボッと加奈子の顔が沸く。
嫌だっ…まだあのモノマネのこと言ってるのっ!?!?
「もうあれは忘れて下さいっっ!!!」
「いやだよ…」
「なっ…」
「最高に面白いのに、忘れるだなんて、もったいないじゃないか…」
そう言ったあとで、プッと吹き出した要は、恥ずかしくて顔を覆う加奈子のことを見ながら、お腹を抱えて笑っていた───…