近くて甘い
第35章 交わらない想いと出発
有川邸の長い長い廊下を光瑠は走っていた。
もう真希が要のものだとしても、身体が勝手に動き出していた。
全く身に覚えはないが、このまま誤解をされたままでは耐えられない…
そして、媚薬なんかに屈した自分が許せないでいた。
何故、真希と櫻井を間違えたのかっ…
これでは、昨日の事も、ただ身体が欲しかっただけだと誤解をされても仕方が無いっ…
重い身体は中々言うことをきかない。
辛うじて、真希の部屋の前に着いた光瑠は、膝に手を当てて息を整えた。
ドアノブを掴んで、扉を押したが、ビクともしないのに、光瑠は目を見開いた。
「っ……真希っ…」
締め出すな…っ
「俺だっ…鍵を開けてくれ…っ」
上がった息のせいで上手く言葉が出ない。
何故こうも上手くいかないのか…
純粋に幸せを、応援してやれないことの報復なのか──…