近くて甘い
第38章 花の都は恋の街
「お前だけ話せ…っ。
俺には代わらなくていい…」
顔を向けずにそう言い放った光瑠に返事をしながら、酒田は要に電話を掛けた。
『もしもし…』
「関根さん、僕です」
『ああ。今丁度電話しようと思っていたところだ』
やけに明るい声の要に酒田は眉をしかめた。
真希さんが傍にいるからだろうか…
ちらりと苦しそうな光瑠の横顔を酒田は遠目から見たあと、良かったです…と要に言葉を返した。
『……それで、進行状況はどうだ?』
「それが…あまり芳しくなくて…今夜、もう一度デザイナーと会いますが…多分状況は変わらないかと…」
疲労困憊の溜め息を聞いた要は、フッと笑った。
何を笑っているのか…
少し腹立たしく思った酒田は、ムッと顔をしかめた。