近くて甘い
第38章 花の都は恋の街
「なんですかそれ?」
『……忘れ物だよ』
「忘れ物???」
フフフと楽しそうに笑う要は、そうだ…と言葉を加えた。
『いいか?必ず伝えろよ?
そしてお前にはまた連絡する…』
「あっ…え??」
『頼んだぞ』
言葉を返す前に一方的に電話を切られた酒田は、電話の画面を見ながら首を傾げた。
「…どうだった」
頃合いを見計らって、近付いてきた光瑠を見ながら、酒田は、いや…と呟いた。
「何かあったのかっ…」
「いえっ…そうではなくて…」
「ならなんだっ!」
はっきりと話さない酒田に光瑠は怒りを露にした。