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近くて甘い

第40章 Tout Hotelでお食事を

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「光瑠さんっ!チョコレートっ!」



「おっ…」




甘い香りにつられて、ひたすらパリの街を走り回る。




目に入るもの全てが新鮮でワクワクする。
何より、隣には……




「よくそんな甘いものばかり食べられるな…」



「甘いものだから食べられるんじゃないですかっ!あっ、これすごく美味しそうっ!!!!」



「おいっ!買ってやるから落ち着けっ!!」




光瑠さんの腕を掴んでグイグイと引っ張る。
呆れながらもちゃんとついて来てくれる光瑠さんに何度も胸の中で大好きと呟いた。




パリの街が素敵なのはもちろん…

隣に光瑠さんがいるから何をしていても幸せ…




「社長……僕はいなくてもいいですかね……」



えっ…?



突然脇から顔を出した酒田さんに私は目を見開いた。



あっ…そうだ、酒田さんがいるのに私全然それを気にしてなかったっ…





「ごめんなさいっ…」




「いえいえ…とても幸せそうで何よりです…」



引きつった笑いを見せる酒田さんに何も言うことが出来ず、私はそっと光瑠さんを掴んでいた腕を離した。





自分だけ、浮かれてて全然周りを見てなかったっ…
ちょっと控えなきゃっ…



ジリジリと光瑠さんから身体を離して行ったら、突然腕を引っ張られて転びそうになった。




「どこにいくっ…」



目くじらを立てる光瑠さんに身体がすくんだ。




「ここは日本じゃないっ…俺から離れるなっ…」



「っ……でもっ…酒田さんもいるしっ…」




小声でそう伝えたら、光瑠さんは私の腰に腕を回しながら酒田さんを見た。





「お前がいなくなったら通訳がいなくなるだろうが」



なっなにそれっ…




案の定、諦めたような顔をして、すみませんと謝罪した酒田さんは、ガクッと肩を落とした。





「ちょっとっ…光瑠さんっ!?!?」


「いっ…叩くなっ!!」


「ほんっと光瑠さんって思いやりがないっ!」




あ?と声を上げ、不機嫌そうに目を細めた光瑠さんのことを少しきつめに見つめた。







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