近くて甘い
第43章 将来の扉
「………………マジかよ……」
見たことがないほどの人だかり。
どこを見ても、
人、人、人………
「ぜってぇ亮たちなんか見つかんねぇな」
振り返りながらハハっと笑った浩平は、愛花の姿がないのに驚いた。
えっ…嘘だろっ…どこいった!?
辺りを見回して麦わら帽子を探すが!どこにもその姿はない。
「野口ーーー!!」
まずいなぁ…はぐれたらヤバイって…っ
「っ……浩平…くんっ…」
微かに聞こえた声を頼りに浩平は愛花を発見すると、人混みをかき分けて、愛花の腕を掴んだ。
「早速迷子だな」
ニッと笑った浩平に愛花は頬を紅くして、麦わら帽子で自分の顔を隠す。
戸惑っていると、手を繋がれてまた心臓が跳ねた。
「ちゃんと掴まってろ」
「っ……ありがとっ」
「今度はぐれたら見つける自信ねぇから」
「こっ、子どもじゃないんだからっ……」
たどたどしく会話をしながら、2人は大きな“Espoir”の看板の下を通り過ぎていた。