近くて甘い
第47章 淡くて儚い
10年ほど前…
「……あら、あなた日本人ね?」
家以外で聞いた日本語に、芝生に寝転んでいた要少年は驚いて身体を起こした。
肌は白くて透けてしまいそう。
長くて緩やかにウェーブしているその柔らかな髪をサイドに束ねている。
華奢な身体は、一目見ただけでちゃんと食べているのか心配になるほどだ。
「君は?」
「やだ…君だなんて失礼ねー」
ふざけたようにムッとするの彼女の姿をただただ要は見ていた。
「図書館で司書をしているの。相原 恵美(あいはら めぐみ)よ。カウンセラーの勉強もしてるの」
年上なのは分かっても、上級生くらいだと思っていた要は彼女が思ったよりも目上だったことに、驚いて、軽く目を見開いた。