近くて甘い
第47章 淡くて儚い
「素っ気ないのね…」
突然背後から声をかけられた要は驚いて思わず背筋を伸ばした。
そして不機嫌そうに振り返って恵美のことを見る。
「……………何ですか…突然」
「……手を振ったんだから、振りかえしてくれてもいいじゃないの…?」
少しムッとした表情が幼くて、要は、あた不思議な気持ちで彼女のことを見つめた。
「………会釈…しましたよね…」
「もぉ…他人行儀なんだから…」
他人だと思うが…
そんなことを胸の中で思いながらも、自然とイラつきはしなかった。
「それで…」
「それでって…?」
「それだけを伝えるだけのために、僕のところに来たんですか?」
持っていた本をパラパラとめくりながら、要が尋ねる。
「………」
「他に何かあるんじゃないですか?」
「………勘がいいのね…」
恵美は観念したような顔をしてニコっと笑った。
「今日…閉館したあと本の整理をするんだけどね…」