近くて甘い
第47章 淡くて儚い
見つめ合ったまま、何ともいえない時間が流れた。
お互いにお互いの唇に視線がいって、吸い込まれるようにしてどんどんと顔が近付く。
要は、少し身体が高揚しているのを感じた。
この感覚は何なのだろう…
それが…知りたい…
後少しで、唇が触れそうなその瞬間、俯いた恵美に、要は目を見開いた。
「……手伝ってくれて。ありがとね」
何事も無かったかのように微笑まれて、要は何も返事が出来ずに固まったままだった。
今、何が起きようとしていた…?
そして…
彼女は…
それを予期して…
避けた…?
「いえ…では…」
戸惑いを隠すように、要は会釈して、その日は、そのまま恵美の顔を見ずに家に帰った。