近くて甘い
第47章 淡くて儚い
二人の荒い息が静かな図書館の中で響く。
「要くん……」
脱力しきった恵美は、腕を回して要に強く抱き付いた。
ふっと笑った要は優しく恵美の顔を覗き込む。
不思議な人だ…
確実に大人なのに、たまに見せる子供のような仕草…
額に口付けたあと、要は恵美の頬に触れて見つめた。
「どうしたんですか…」
一瞬泣きそうな顔をした恵美は、服装を正しながら、うつむく。
その弾みに、コロンっと音を立てて、床に何かが落ちた。
「落ちましたよ?」
慌てる恵美を少しいじらしく思いながら、要はキラリと光るそれを掴んだ。