近くて甘い
第48章 想いは混ざる
「っ………」
「かな…?」
聞き慣れた優しい声が響く。
「なっ、なにっ…」
「その、副社長ってやつが、好きなの?」
春人の問いかけに、加奈子は、もろに顔を赤くさせた。
分かりやすい加奈子の反応に、春人は、無表情のまま加奈子の顔を見ていた。
「結婚するって言ったよな?」
「はっ、はい???」
「はい?じゃねぇよ、浮気者がっ…!」
ムッとむくれた顔をみせた春人に、加奈子は、押し倒されたような姿勢のまま首をひねった。
結婚するってなんだ…?
そりゃいつかは結婚したいと思ってるけど…
「俺、かなのこともらいに来たんだよ」
「もらう…?」
あれ…?しまった…なにか春人に借りてたっけ?
え、でも地元なんて、新幹線が飛行機じゃないと、帰れないようなところだっていうのに来るだなんて、なんか、すごい執念だな…
「そんなに大事なもの借りてたっけ?」
加奈子の素っ頓狂な答えに、慣れている春人は狼狽えることなく加奈子を見つめたままだった。