近くて甘い
第49章 逃げ道
「私…パリで光瑠さんと二人でいたときに思ったんです…。
光瑠さんは、外国語なんて全く出来ないのに、私のために一生懸命頑張ってくれて…」
ふふっと真希は小さく笑って、酒田と要の事を見つめた。
「ジェラート…ジェラート買うのに、20分もかけたんです…」
「……社長らしいですねぇ…」
呆れたように笑った酒田の言葉に、ドアの外で聞いていた光瑠は、不機嫌そうに息を吐いた。
要は、ドアの方をみて、下から微かに入り込む影に気付き、フッと笑った。
「将来何をしたいのかって、梨子に聞かれたとき、真っ先に浮かんだのが、光瑠さんの顔だったんです…。
光瑠さんはいつも私のために頑張ってくれてて…助けてくれて…。
だから、私も…ちょっとだけでもいいから、光瑠さんの役に立つ事がしたい…。」
ニコリと笑った真希は、瞳に強い光りを宿して酒田と要を見つめた。
「それが…私のしたいことなんです…」
真希……
ドアの外で、何かを考えたような表情で、光瑠は立っていた。
こんなにも想われているとは…
胸の奥から込み上げるものを感じながら、光瑠はただドアをジッと見つめていた。