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近くて甘い

第49章 逃げ道

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自宅マンションの鍵を開けた要は、ジャケットを脱ぐと、すぐさま置いてあるワインを開けてグラスへと注いだ。



深い赤が波を打ってグラスの中で踊る。


三分目程度のところで注ぐのをやめると、要はグラスを掴んで一気にそれを身体へと流し込んだ。



「ふ…ぅ……」



片手で髪をかきあげた要は、グラスを置くと、キッチンに両手をついて項垂れた。



───────プロポーズされたぁあ!?!?!?!?!?



社内に響き渡った藍の声…


動揺する加奈子の動き…




再びグラスの中でワインが踊る。



調理台にやや腰掛けるようにして寄りかかった要は、また何かを考えるようにしてワインを口にする。



心なしか、いつもより飲むペースも早くなっていることに、要自身も気付いていた。




───────私、副社長に片想いを続けます!



大分前にされた宣言に、毎日手にしていた温かいクッキー…



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