近くて甘い
第49章 逃げ道
彼女は…いつも一生懸命で…
明るくて…
そんな彼女の想いに、応えられなかったのは紛れも無く自分自身…
彼女に相手がいたっておかしくはないし、責められることでもないことは当然のことだ。
ひたすらに流し込むワインが、要の身体を熱くさせる。
自分は、何をこんなに動揺しているのだろう…
いつものように冷静さを保とうとしても、加奈子がプロポーズをされたということと、そのハルと呼ばれていた男が、彼女の自宅にいる事が、どうしても頭から離れない。
自分でも不快なほどに苛立って仕方がない…
ふっと息を吐いた要が、ワインボトル一本を開けていた丁度そのとき、ピンポーンとインターホンの音がなって、要は、ん?と眉を寄せた。
こんな時間に誰だ…
不思議に思いながら、要は廊下を通って玄関の扉を開けた。
「はい、どちらさ──」
「要くんっ…!」
知っている声音に思わず背筋が伸びる。
顔を上げた要は、目の前に立つ恵美の姿に顔を強ばらせた。
「先生…」
「ごめんなさい…こんな夜遅くにっ…この場所は会社の方に──」
「何の用ですか…」