近くて甘い
第49章 逃げ道
冷たく凍るような声に、恵美はめげない。
うるうると、その大きくて魅力的な瞳を揺らして、要のことを捉えている。
そして、突然要のこと抱き締めて、グッと腕の力を強めた。
「っ…ちょっと…何のおつもりですかっ…」
「要くんっ…あの人と付き合ってるなんて嘘でしょ…っ」
「─────なぜですか…」
以前会社にきた恵美を巻くために、とっさにその場にいた加奈子のことを、付き合っている人だと紹介したことを要は思い出していた。
「不自然だったから…だから私、色んな人に聞いて…」
「……あなたは一体何がしたいんですか──」
抱き締めながら見上げてくる恵美のことを見下ろしながら、要は目を細めた。
突然現れて…
心を乱して…
そして彼女は突然、目の前から消えた…
また再び現れて…
「好きよ…」
再び心を乱してくる──…