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近くて甘い

第50章 選択

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降りしきる雨を見ながら、要は車のハンドルに腕を乗せていた。



パッとしないこの気候に気分がシンクロする。



そう…


パッとしないのだ。



そんなはずはないのに…




「お待たせっ…ごめんなさい…」



助手席の扉が音を立てて開くと、恵美(めぐみ)が、傘を閉じながら、乗り込んできた。



「いえいえ…待っていませんよ…」



そう笑顔で返した要に恵美も笑顔を返す。




そう…


過去の想いを遂げたはずなのに、



気分がパッとしないなんて…



そんなことは有り得ないのだ──…




「では…行きましょうか…」


「ちょっと待って」



出発しようとする要を止めた恵美は、ん?と首を傾げる要に顔を近付けてると、チュッと音を立てて唇を重ねた。



「───…」



「じゃあ…行こっか…」




少し照れた表情を見せる恵美を見ながら、要は固まると、少し遅れて返事をして、アクセルを踏んだ。





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