近くて甘い
第50章 選択
「なにそれーーー!!ひどくない!?!?」
休日の昼、おしゃれなカフェで加奈子が、雰囲気を壊すように大声を出す。
「ばかっ…声でかいっ!」
「っ…だっ、だってっ…そんな地元でドジかなって呼ばれてるだなんてっ…」
春人の言葉に小声で反論した加奈子は、ムスッとした顔を春人に向けていた。
「仕方ないだろ…事実なんだからさ」
ケラケラと笑う春人のことを見ながら、はぁっと溜め息をついた加奈子は、しばらく楽しそうに笑う春人のことを見ながら、徐々に微笑みを見せる。
「……みんな元気…?」
「ん…?ああ。元気だよ」
のどかな実家の風景が、加奈子の脳裏で浮かぶ。
こんな何もないところ!なんて思って出てきたけれど、出てみると、寂しくて…
「帰ってこいよ、かな…」
「────…」
「一緒に帰ろう…。おばさんもおじさんも待ってるよ」
テーブルに置かれた加奈子の手を春人は上から重ねた。
「かな…」