近くて甘い
第50章 選択
真剣に想ってくれる人が目の前にいる…
嬉しいはずなのに、考えることは、
これが副社長だったら…
そんな薄情なことだ───…
「デザート、たのもっ…」
「────」
話をかわされた春人は、ガクッと肩を落としながら、離されてしまった手を自分の方へ引っ込めた。
焦る必要はない…
メニューをしきりに見る加奈子の顔をジッと見た春人は、そう自分に言い聞かせると、自分の手元にあるデザートのメニューを広げた。
「じゃあ、私、これにする!」
「ん?どれっ?」
「えっと、この、フェッ、あ、違う、フォっ…フォンダン…」
「フォンダン・ショコラね」
呆れたように春人が助け舟を出すと、加奈子は、ハハっと笑いながら、顔を上げて、固まった。