近くて甘い
第50章 選択
細くて美しい栗色の髪が肩から流れる。
消えてしまいそうな、そんな儚さを帯びた女性が、楽しそうに小さく声を上げて笑う…。
その向かいに座るのは…
「かな…?どうかした?」
「っ…私っ…ちょっとお手洗い行ってくるっ…」
「えっ…ああ…」
急に立ち上がった加奈子に驚いた表情を見せながら、春人は加奈子を送り出すと、首を捻りながら、自分の背後を見つめた。
誰かいたんだろうか…
あの動揺ぶり…もしかして…
胸をざわつかせながら、他とは全く違う雰囲気を出している2人組に目を留めた。
もしかして…
座っていても、どこかのモデルかと見紛うほどの体系
黒髪が靡いて、露になったその横顔に、春人はゴクリと唾を飲む。
なんだ…あのイケメンは…
呆然とするさなか、向かい合って座っていた女性が立ち上がったのを見て、春人は慌てて体勢を戻した。