近くて甘い
第52章 未来のために
メイドさんが持ってきてくれた救急箱を開いて、患部を消毒すると、いっ!!と声を上げて指を引っ込めた光瑠さんは、驚いた様子で私のことを見つめてきた。
「もぉ…大袈裟なのは光瑠さんじゃないですか…。消毒してるんですからジッとしていて下さいっ!」
「っ…ふざけやがってっ…。なんでこの俺が、こんなことを…」
「隼人のためなんですから、そんなこと言わないで下さい。ほら、もう絆創膏貼るだけですから…」
「分かってるっ…!別に俺は…」
「はいはい…もぉ…って…あ…」
呆れながら、絆創膏を貼っていたら、その絆創膏を見て光瑠さんは、また大きくを見開いた。
あれ、普通の絆創膏だと思ったのに…
「おいっ!!!!! ふざけるなっ!俺がこんな猫の柄のものを指に付けていられる訳がないだろうがっ!」
「き、気付かなくてっ…でももう同じ絆創膏しか入ってないんです…。
どうせ効果は変わらないんだし、いいじゃな──」
「いい訳ないだろうがっ!! いいかっ!俺はこの家の主人で、有川商事の…」
あぁ…また始まった…。