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近くて甘い

第52章 未来のために

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トクントクンと音を立てる心臓に手を当てて、加奈子はまたさらに心拍数を速める。



特別な意味なんて何もない…



分かっていて、今夜、会社以外で要と一緒に過ごすという事実に、舞い上がってしまって止まらない。



ハルとの結婚を決めたのに、薄情だよなぁ…


でも…最後だから…


これで…終わりだから…


ハル…?許してね。




「お待たせ…」


「っ…こっ、こんばんっ…」



ハンドル片手の要の姿に、加奈子は、言葉を失った。


かっこいい…。



「田部さん?」


「あっ、すみませっ…」



せかせかと助手席にまわる加奈子は、いつもより高いヒールにヨタヨタと歩く。


今にも転びそうな彼女に、要は、にんまりとしながら、じっと彼女を観察していた。




「あっ、あのっ…お忙しいのにわがままを言って…っ。ぎゃああっ」


「おっと…」



助手席の扉を開け、頭を下げた加奈子は再び頭を上げた時に、ゴンっと鈍い音を立てて頭を車の上にぶつけた。




いったぁ…
もぉっ…なんで最後なのにこんな失敗っ…

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