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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 しばらく見るともなしに空を眺めていた嘉門はうーんと伸びをして、再び歩き出す。ただでさえ上背のある彼がそうやって伸び上がると、余計に並外れた長身が目立ってしまう。
 ふいにやわらかな風が頬を撫でて通り過ぎ、嘉門はこのまま家に帰るのが億劫になってしまった。
―帰れば帰ったで、また、母上のあの小言を耳にせねばならぬからな。
 胸の内で独りごちて、つい苦笑する。

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