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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 母にしてみれば、自分は長じて己れの身分立場に見合うだけの大名の許へ嫁ぎ、その奥方となるのだと信じて疑っておらず、また、そういった望みがあながち無理なものだとはいえないほど、母は恵まれた、やんごとない生まれの姫であった。
 しかし、母のその願いはあっさりと覆されることになる。母が六歳になった年、父親嘉が許婚者を決めた。

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