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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 当時、親が勝手に縁談を決めるは格別珍しくはない。母の場合も父―つまり嘉門にとっては祖父がその盟友である石澤守尚(もりひさ)の嫡男との婚約を取り決めたのである。守尚の嫡男兵衛は幼名を惟(ただ)治郎(じろう)と名乗っており、母よりは三つ上の九歳になったばかりの少年であった。

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