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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

―冗談ではないッ! 母上。私は、あなたや伯父上の傀儡でも操り人形でもございませぬぞ。なまじ家柄と気位ばかり高い女を嫁に迎えれば、一生の不幸だとこの私、父上の積年のご苦労を見て、厭というほど肝に銘じておりますれば、そのような縁組はひらにご容赦願い上げる。
 刹那、母の美しい面が引きつるのを、嘉門は確かに見た。
 そのまま逃れるように屋敷を飛び出してきたが、後味の悪さは募るばかりであった。

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