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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

 父の不幸が母との結婚に起因したのは紛れもない事実だ。が、今になって、そのことで母を責めたとて、何になろう。
 母は思えば、不器用な女なのだ。父を愛しながらも、気位の高さゆえに素直になれず、己れの感情表現が上手くできなかった。また、そんな母を愛せず、他の女に心の安らぎを求めた父をも責めることはできまい。
 なのに、母を心ない言葉で罵倒してしまった。父にも捨て置かれた哀れな母にとって、息子の自分だけがたった一つの生き甲斐であるのに―。

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