両親へのプレゼント
第6章 父親の入院
8月2日の夜、私が夜勤の時に梨奈から連絡が入った。
私は確認の電話でも入ったのかと思いながら受話器をとると、
「こんばんは、小池です。先日はありがとうございました。あと....申し上げにくいのですが、先日に予約を入れてもらいましたが、キャンセルをしていただけないでしょうか?」
と少し辛い声で梨奈は言った。
「ご両親に急な用事でもできたのですか?」と私が聞くと、
「いえ.....」と言った後、少し沈黙があり、
「実は、昨日父が再入院してしまって、いつ退院ができるのか、わからないのです。以前から身体の具合が悪かったものですから」と梨奈は言った。
「わかりました。では、今回は残念ですが、キャンセルをしておきますね。お父様に、『お大事になさってください』とお伝えくださいと言い、それ以上のことは言及しなかった。
私は彼女にキャンセルをしてほしいと言われたが、すぐにキャンセルをしなかった。
その理由は、もしキャンセルをしてしまったら、当日は満室のため、万が一、彼女から再度問い合わせが入った時、100%とれないことは明白であったこと。もう一つの理由は、私の気持ちの中で、ぜひ彼女の父親が16日までに退院をしてほしいと願っていたからだ。
ただ、梨奈のあの時の寂しそうな声がずっと気にかかっていた。
1週間後の8月9日に仕事場より彼女の自宅へ電話を入れてみた。
しかし、終日、家には誰もいなかったようで連絡がつかなかった。
その後も、1日おきに電話を入れて、ようやく8月13日に連絡がついた。
その日、彼女の母親が電話に出て、私がご主人の病状について聞くと、
「ご心配をおかけしまして、申し訳ございません。又、せっかく予約を入れていただいたのにキャンセルをしてしまい、皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました」
と謝罪の言葉だけで、詳しいキャンセルの理由については話してくれなかった。
ただ、入院をした夫が8月16日に仮退院できることを教えてくれたのだ。そして、今、娘の梨奈が京都のF病院へ見舞いに行っていることも話してくれた。