両親へのプレゼント
第8章 8月16日
8月16日になった。
私が夜勤で仕事につき、数十分後に梨奈から私宛に電話が入った。
彼女を含め、両親の到着が17時頃になるという知らせであった。
その日は、16時頃からチェックインのお客様でフロントカウンターは賑わっており、私がフロント事務所にいた時、女性スタッフから小池様が到着されたという知らせを受け、すぐにフロントカウンターへ出た。
私はその時、初めて梨奈の両親に会ったわけだが、彼女の父親が何度も頭を下げられるため、逆に私は恐縮してしまった。
「はじめまして。小池でございます。今日はお世話になります」と彼女の父が言うと、
「いらっしゃいませ。お待ちいたしておりました。ご結婚20周年おめでとうございます」
と私が言うと、彼女の父、洋が少し驚いた表情をされたので、
「実は、梨奈さんから、今日がご結婚記念日だと聞いておりましたので」
「そうだったのですか? 今回はいろいろと皆様には、ご迷惑をおかけして申し訳なかったです。今日は大変楽しみにしています」
「いえ、とんでもございません。本日は、ご家族でごゆっくりお過ごしくださいませ」
と私は言った。
「ご登録は、どなたがされますか?」と私が梨奈に聞くと、
「梨奈が書いてくれる? きれいな字で書いてね」と彼女の母親が言ったため、
「だったら、お母さんが書いてよ」
「お前たち、ここまで来て喧嘩をしないでくれよ。恥ずかしいだろ」
と洋が言うと、二人は顔を見合って笑った。
結局、梨奈が全て記入し終えると、
「今日はこの後、ご家族で大文字の送り火を見に行かれますか?」と私が尋ねると、
「ぜひ、みんなで行きたいと思っていたのです。テレビでは何度も見ていますが、実際に一度も行ったことがないのです」と洋が言うと、
「では、19時にホテルのマイクロバスが、その近くまで送りますから、ぜひご乗車下さい。予約制になっていますので、3名様で予約を入れておきます」と私が言った。