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ショートラブストーリー

第8章 美帆(みほ)①

その場にいるのが辛くて、中座してトイレに逃げ込んだ。

倉田さん…一体何なんだろ。

こないだの居酒屋で、

『今度の部会で後押ししてやる』

って言ってたのに…

後押しが、あれなの!?まさか!?

手を洗い、何気なく鏡を見る。

可愛い、だって。

課長が撫でた辺りを自分で触ってみる。

頭ポンポンは…かなりポイント高いかも。

照れて顔を赤くした自分に苦笑して、トイレから出たら

「長ぇよ!!」

倉田さんが壁に凭れて立っていた。

「は…っ!?」

「便所はお前の家か?寛いでんじゃねぇよ」

「なっ…!!」

なんなの!?何なの!?この人!!

「お前さ」

倉田さんがあたしに手を伸ばすと、おもむろに髪の毛をぐちゃぐちゃと掻き乱した。

「やっ…!!何するんですか!!」

必死で抵抗して…でも阻止できなくて、髪をボサボサにされた頃、ようやく倉田さんは手を止めた。

「すっげー頭」

「ひど…!!」

「わりぃ、わりぃ」

倉田さんはクックッと喉の奥で笑いながら、両手であたしの髪を梳いて整えた。

優しいその手つきに、どうしても戸惑ってしまい

「倉田さん…何がしたいんです?意味が分かんないんですけど」

眉根を寄せて倉田さんを見ると、倉田さんは笑いを止めて目を細くした。

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