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ショートラブストーリー

第9章 貴史

「何これ」

「クッキーって言ったろ?」

「じゃなくて…どうしたの?これ」

「貰った。料理部で今日作ったんだと」

「料理部。…へぇ…」

美夜子はクッキーを見たまま、難しい表情を浮かべてる。

「どうした?食わねぇの?」

「え?あ、食べる…けど…」

リボンをほどいたら、中から型抜きクッキーが出てきた。

「あぁ…確かに…」

それを見て、思わず呟いてしまう。

色んな形があるなかで、ハートが妙に多い。

確かに、テーマ通りの代物だ。

これをあの榊原が作ったんだと思うと、笑いがこみ上げてくる。

「ん?たかちゃん、どうしたの?」

俺は笑いを堪えながら

「いや…。彼氏に初めてのプレゼント、ってことで作ったんだと。いかにもそれらしいよな」

「……え!?」

食べようとしてた美夜子の手が止まった。

「ねぇ…誰からもらったの!?」

「言ったろ?榊原だよ」

「彼氏へのプレゼント、何でたかちゃんがもらうの!?」

「たまたま?偶然会ったから…かな」

「…ほんとに偶然?」

こいつは何が言いたいんだ?

…あ、もしかして。

「榊原って、男だからな」

美夜子はきょとんとした顔で俺を見て…見る間に赤くなった顔を隠すように下を向いた。

「そっか…凄い上手だね」

「まあ、腐っても部長だからな」

「なにそれ」

照れ笑いを浮かべる美夜子。

やきもち妬いてるのって…何て言うか…すっげぇ可愛い。

にやけそうになる顔を押さえて咳払いをすると

「食いながらでもいいからやるぞ」

と、教科書を広げた。

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