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ショートラブストーリー

第9章 貴史

「美夜子…」

俺が何気なく言った言葉をそんなに深くとらえてたなんて気付かなくて。

それよりも。

こんな風に俺の本質に深く入り込んでこられたのが初めてで。

どうしたらいいのか判らず―俺は美夜子を抱きしめていた。

「たかちゃん…?」

戸惑った声を上げてる。

そうだよな。俺だって戸惑ってる。

自分の中に沸き上がった感情に。

「美夜子…俺、駄目かも」

「え…?」

「お前じゃないと…駄目かもしれない」

言ってから妙に照れくさくて、美夜子の肩に顔を埋めた。

「…うん!!」

嬉しそうな声で答えると、俺の背中に手を伸ばして、ぎゅっと抱き付いてきた。

「嬉しい。たかちゃんからそういう言葉聞いたの、初めて」

…くそっ!!何でそんな事言うかな!?

「もう二度と言わないからな」

照れ隠しでボツリと呟くと

「えー!?…でもいっか」

不満の声をあげつつも、俺の頭に頬を寄せて

「ちゃんと頭の中に保存したから。いつでも思い出せるからね」

「んなもん、思い出すな!!」

「やだ。レア物だよ!?プレミアム級だもん」

何との比較対象か分からない称号で分類されても、ありがたみは何も湧かない…のに。

美夜子の顔を窺うと、とろけそうなぐらいの笑みを浮かべていて。

…くそっ!!俺の心臓!!!

いちいちドキドキするなっての!!

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