テキストサイズ

ショートラブストーリー

第10章 美帆②

ほんの2分足らずの距離にある駐車場まで、課長と相合い傘状態で歩く。

うっ…。緊張する…!!

自分から『送る』って言ったんだけど、この近さは考えてなかった!!

課長の顔を見れなくて、なるべく前を向いているんだけど。

傘を持ってくれる課長の手が顔のすぐ側にあって…

事務職メインなはずなのに、骨が太そうなゴツゴツした指をしてるんだな。

あたしのとは違う、男の人の手。

「…北方さん?どうかした?」

「え!?」

「いや、一点をずっと見てるみたいだから」

「あ、全然!!何でもないです!!」

うわ!!課長の手に見入ってたの、バレた!?

思わず焦って、歩き方がぎこちなくなる。

「…離れると、濡れるぞ」

課長がくすっと笑い、あたしの方へ傘を傾けてくれる。

「課長が濡れちゃいますよ」

「じゃあ、もっと側に来てくれよ」

その言葉に、どくん、と心臓が大きな音をたてる。

深い意味なんてないって分かってるのに…どんな表情していいのか分からない。

ちょっと俯いて、はぁ…とか小さく返事して、傘の下に入り込んで歩き出す。

どうしよう。顔が熱い。

夕方で、雨降りで、傘の色も濃い赤色で…薄暗いよね!?気付かれないよね!?

顔、赤いの、どうか分かりませんように!!

ストーリーメニュー

TOPTOPへ