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ショートラブストーリー

第2章 高橋

店に入ると真由美ちゃんはキョロキョロと周りを見渡していた。

俺はイラついてる心を落ち着かせようと、真由美ちゃんに悟られないよう息をつく。

「あ…あれ?スタッフさんは?」

戸惑い気味の声に、俺は罰として居残り掃除してる事も、罰の理由がラテアートだという事も言えなかった。

「今日は暇でね。早じまいして帰ったとこ。俺しかいないから安心して」

言ってから後悔した。何に対しての『安心』なんだか。

真由美ちゃんに不信感抱かれないように。

それを心がけて、まずはカウンター席に座らせると、隣の椅子に座った。

「あ、何か飲む?カフェラテ入れようか?」

何か飲んだ方が緊張ほぐせるし、俺も間が持つし。

そんな俺の提案も断られ、さてどうしたものか…。

いきなり泣き出したり虚勢はったり…仕事の悩みじゃなさそうだな。

となると、やっぱ男がらみだよなぁ…。

嬉しそうでもないし…失恋とか、振られたとかかな?

「そっか…。真由美ちゃん、俺で良かったら悩み聞くよ。…言ってみ」

顔を覗き込んで静かに訊ねる。

俺、すっげーやな奴。

イイヒトのふりして、心のどこかで振られた話を期待してる。悩み聞くふりして、付け入る隙を狙ってるんだ。

「あ…あの、ね」

震える声で。

俺なんかに悩みを相談してくれるの?

でもそんなか細い声で他の男の話をするのか。

仕向けたのは俺なのに、すっごく身勝手だよな…。

「好き、なの」

うん。やっぱり恋バナだったか…やっぱな~。

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