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ショートラブストーリー

第11章 美帆③

お酒のせい?車の振動のせい?

揺れてる時に、急に持ち上げられるみたいに振動が止まったせい?

原因なんて今さらどうでもいいけど!

……気持ち悪く、なってきた…。

姿勢を正したら多少楽になるかな。

少しだけ前屈みぎみに座り直してみる。

だって、課長と会えるの、今日で最後なのに!!

家に着くまであとちょっとだし!!

今日は笑顔で!って決めたんだから!!

あとどれくらいなんだろう。

外を見たら、見慣れた公園の池が見えた。

あ…三井寺公園だ。

って事は、あと10分は乗っていなきゃならないのか。

頑張れ、あたし!!

膝の上の手をぎゅっと握り締めて、全身に力を入れて耐えていると

「北方さん…どうした?」

課長があたしを見て、驚きの声を上げる。

心配させたくなくて、無理に笑顔を作る…けど

「顔、青いけど…酔った?」

うわ。バレバレだったみたい。

うつむいて課長の視線を避ける。

「運転手さん、あとどれくらい?」

「そうだねぇ。この混みかただとあと10分はかかるねぇ」

やっぱり。あたしの予想と同じだ。

「大丈夫、です」

これだけ絞り出すように呟いて、ぎゅっと目を閉じた。

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