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まとまらないお話たち

第6章 6

けれど、現に自分と加藤はアンクレットの交換をしたし…
「落し物ですよ、お姫様」
廊下の中心、人気のないところで立ち止まり、荒い呼吸を落ち着かせていたところでそんな言葉と共に目の前の視界に現れた……、紺と黒のアンクレット。
見間違いじゃない、他人のじゃない、ちゃんと竜のRと彫られたプレートが、下がっている。
聞き間違えるはずのなかった声に、顔を上げるとやはり拾った人物はその人で。
≪駄目よ、駄目なの。その男に拾われたということは、今まで感じていた彼への愛は失われたということで。その人への愛がその男に移ったということになるの―――≫
あんな無茶苦茶な言葉に惑わされてたまるか、と
「ッ…、ありがとうございます」
すぐさまその男の手からアンクレットを引ったくり、手探りで左手首に巻きつける。
「? …やけに大きなブレスだな」
君村の言葉には嘲笑が含まれていた。
足首は足を支える分、手首よりも少しだけ太い。
少しだけ…ちょっとだけ。
それがわかってるはずなのに、わざわざ言うなんて……。
「……二重に巻きつけるやつなんで」
反論しながら、その言葉に、腹が立った。
いや…この男には最初からイラついていたけど。
何が23で教師だ、まだそんな若僧のくせに教師ぶるな、威張るな。
他の先生は見逃してくれるのに、態々指名して。
…その後もあてつけのように指名して。
悔しいから全部答えてやった、……いつもの倍勉強した。
バカな生徒だと思われたくなかった。
「加藤はもう帰ったんだろう、俺がはめてやろうか?」
それは、もしかして男がつけなければ意味がないと今の自分の言葉で感じたのか、それとも単なる挑発か。
とにかく何を言うんだ、この男は。
そう思って敵意の篭った目で睨みあげると君村は素早い動作で緩く巻き疲れていたアンクレットを手に取り屈み込んだ。
「丁度―――同じ男だしな、俺もこの色合い好きだし、名前のイニシャルはRだし」
だからつけるというのか、そんなことをさせたら加藤と別れるのは決定的だ…
「…結構です」
奪い返してはっと我に返った、…何をそんなにビクビクしているのだろうと。
噂が真実になるのが怖い―――? こんな男となど恋に墜ちるはずないのに。
「あ、そう。人が折角親切心でやってあげると言っているのに、断るのか」
イライラする、一々返してくるのが。
黙っていればいいのに。

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