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まとまらないお話たち

第6章 6


気付いたのは家に帰ってすぐ。
だから制服姿のまま飛び出して、今日は教室以外特に移動してはいないので、教室だろうと思い只管探した。
「あっれーおかしいなぁ」
けれどどこにもソレはなく。
トイレかと思ってそこまでの道を歩いたり、廊下を探したりしたが見当たらない。
やはり教室だろうか……床にしゃがみこんで、椅子と椅子の間、机と机の間をくまなく探したりしていると。
「滝本、何してんだ?」
にゅっと同じ目線でそのニキビだらけに坊主頭の、その顔が現れて心なしかハル子は驚いた。
「! なんだ三谷か…驚かさないでよ」
「何してんだ?」
こちらの言葉も聞かずに、リピート。
溜息半分、この恰好を見られていたのかと思うと急に恥ずかしくなってハル子はすくっと立ち上がる。
そしてスカートや上着についたホコリを払った。
「別に三谷には関係ないでしょー落し物探しっ」
「あ? お前もバカだなぁ、落したモンぐらい態々探さないでも良いっつーのに」
バカはどっちよ、と胸中で毒づきつつ。
「大したものじゃないならとっくに帰ってるよ」
そして今家にいるさ、でも大したものじゃないから……
『ハル子』
加藤がくれたアンクレット。
黒と紺のソレを、ハル子はなくしてしまったことに家に帰ってから気付いた。
別にミサンガじゃないから切れても何も良いことが起きる訳ではない…加藤のようにわかりやすく鞄にでもつけておけば良かったのか、…いや、ソックスの上からじゃなく下に巻いておけば良かったのかもしれない。
「しゃーねーなー…、探してや「いいっ!!」
思わず大きく叫んで、驚いた顔をした三谷にはっと我に返ったが、…訂正せず。
「もう帰るからいいよ、バイバイッ」
ウソ、帰るはずなんてないのに。
とりあえず三谷が教室を出るまでどこかで時間を潰していようと、廊下に飛び出した。
「っ、はぁっ、はぁ…」
誰に追われている訳でもないのに、行き先がある訳でもないのに只管、廊下を走る。
アンクレットについての話は、カップルが共につける以外に話はあった。
それは、片方でも失くしたらソノヒトへの愛が冷めているということ。
同性はともかく、異性と共にそれを探した場合は、〝彼〟ではなく、〝他人〟にそれが見つかってしまった場合は。
2人は別れることになる―――――2人の愛は永遠とはならない。
そんなもの、バカらしい噂だと思っていた、単なる噂。

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