まとまらないお話たち
第10章 10
「えー……、では教科書の図を見て下さい。これは……」
つまんない。
退屈。
黒板の前に立つ、頭がふわふわパーマおばさんの変な似顔絵をノートに落書きしながら外を見る。
ああ青い空……白い雲……。
この時期にしては、雲みたいな空だなぁ。
ふと下を見れば学園の庭園内を、着物姿の男の人が散歩してる……って、え?
「(和装?)」
「光田さん。どこ見てるの。集中しなさい、授業よ」
「あ…ハイ」
パーマさんの叱責に前を向く。
でもパーマさんが背中見せたらまた横へ。
「……」
着物…ってか、狩衣装束という平安時代に男が着てる、そうそう、陰陽師とかいう映画で主演男優が着ていたものと似ている。
頭には烏帽子なんかかぶっちゃってさ。
というかあの着物の色……。
「(あ、)」
不意に男が顔をあげて、目が合った。
やんわりと笑むと、男は私に向けて頭を下げる。
「……うそ」
呟いて派手に椅子から転げ落ちてしまい、クラスメートが笑うなか「光田さん!」とパーマおばさん先生の声がヒートアップした。
「……あ……すみません、実はさっきから頭とお腹がすごい痛くて……」
よくあるだまし文句が自然と口をついて出る。
急いで鞄に荷物をつめる様は、どうみても病人のそれじゃないだろう。
「ごめんなさい先生、私、早退します」
おばさん先生がもう一度私の名を呼ぶ前に教室を出た。
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