テキストサイズ

まとまらないお話たち

第2章 2


…とかなんとか気合いをいれておきながら、結局ゴール地点に着くころには半分泣きべそで。
平然とした顔で、というかニヤニヤした顔で一足先に愛車らしき黒い車の前で待っていた藤堂先生を見たとたん、なぜだか無性にイラッときた。
「…何? 俺の姿がなくてさみしくて泣いちゃったの?」
しかも言葉が言葉だし。
「…」
ふくれ面でカギを黙って差し出すと
「ああ、サンキュ」
と彼は受け取った。
「………」
「………」
無言。
藤堂はいまだに笑顔を浮かべたまま。
一方の私はブスッとした顔をして。
ああ、本日二度目だ…脚が動かないのは。
「……」
先生はわかっているんだ、私の心情が。
それでわざと言わないで…ズルイ。
「先生、送ってくれますか?」
こうなったらもうこっちが折れるしかない。
「どこに? 俺の家?」
「……いえ、私の家です…」
「あぁ、そう。それは残念」
鍵片手になんでまだ笑顔のままこちらをずっと見ているんですか。
あの、早く…お願いしますよ。
もし見られたら…仮に生徒じゃなくて先生でも、ヤバイでしょう。
「……………慎之介先生、お願いします」
他に手段が思いつかなかったので名前で呼んでみた。
…なんか変な感じ…いつも逆に呼ばれているのは慣れていたんだけど。
自分が呼ぶのはなんだか、なぁ…。
「っあー、悪い。お前の表情、面白くて」
すると今まで笑いをガマンしていたかのようにぷっと先生は吹き出した。
「…(面白いって…)」
何考えてるんですか。
「悪かったって山郷。ほら、乗ってい…あぁ、反対側行って」
おかしそうに口元を押さえながら言う先生とは反対に険しくなっていく私の顔。
それを見てさすがにちょっとは反省してくれたのか、ドアを開けてくれ……って、反対側、ということは左運転=外国車!?
「……」
さっき確かに「教師の給料なめんな」と言ってました、が…コレは……。
先生、何か教師という職業のほかにもヤバめのとか………してません?
「いやーそれにしても面白いのが聞けたなぁ。苗字も良いが名前はもっとイイ。山郷、これからはそう呼んでくれよ」
「…はぁ…」
ロックのかかっていなかったドアを開けて中に入ろうとするとこれまた高級車の匂いがして頭がクラクラした。
ああ、どうしましょ…。
「? 山郷?」
先に運転席のシートへと座った藤堂が不思議そうに首を傾げる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ