まとまらないお話たち
第18章 18
連れて来られたのは白い建造物の中。
それまで黒いローブに身を包んでいた男は建物同じく白い長衣を身に纏い、私は床に描かれた陣の中央に置かれた寝台みたいな長い台の上に横になっていた。
目を閉じて胸の上で手を組む。
大人しく指示に従うのは癪だがこれも早く村に帰るためだ。
「 」
男の声を音として聴覚が拾うが何を言っているかまではわからない。
唇の動き一つすら素人目には解らんというのに呪文は本当に気味悪い。
頭の先からつま先まで気だるい感覚のあと。
全身の血液の流れが心臓へ一方通行となりそこから更に外へ吸い上げられる不快感に眉を寄せる。
前髪をかきあげて額に温い何かが触れた。
くすぐったくて眉を寄せると生暖かい空気が肌にかかる。
「…おいセクハラ」
下腹部を円を描くように撫でられ、思わず目を開いてしまった。
女性らしからぬ言葉遣いになってしまうのは仕方ないと思う。
予想どおり奴の手が私の体に触れていたのでそれを払うと体を起こした。
そんな私を見て男はしょうがねぇなと肩をすくめる。
「大人しくしてないと、ガキが産めなくなるぞ」
「それはまたいやらしい呪いね」
「……記憶も無くなるが」
「別に、なくなったらまた新しく作ればいいし」
「そうか」
台をおりてドアへ向かう私を咎めることはせず、男はただ黙って見送る。
近づくと勝手に消えるドアにまだ慣れないちょっとの恐怖を感じつつも、ドアの形にくりぬかれた白い壁をくぐる。
またもや白い無機質な廊下の壁際に小柄な女の子の姿があった。
出口を聞くか――いいや、自分で見つけよう――声をかけずに通りすぎようとすると、「ねぇ」子供特有の高い声がした。
「?」
足を止めて顔を向ける。
少女は感情の読めない瞳で私を見ていた。
「こわいの?」
「こわい…?」
「みんな。わすれちゃう」
「……」
なんだこの子。
この子もあの魔技士の術?
「すきなひと。わすれちゃう。こわいの?」
「……。好きな人なんていないよ」
だから正直村の人達のことを忘れたとして何か不自由がある訳じゃない。
ただ、私のことを育ててくれたじい様ばあ様のことを忘れるのはなんだかさみしいし申し訳ないなとは思う。
「じゃあ、なにがこわいの?」
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