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まとまらないお話たち

第3章 3


「えーと…どうしましょうか、ここ」
「…うーん、そうだね。とりあえずこれとこれ…は、いらないと思うけど」
失礼にも会長の机をお借りして、更にはペンまでも。
会長が指を指したところを一先ず赤ペンでバツ印をつけていく。
原稿を一緒に見る際、どうにもお互いの顔が近いようになってしまうけど仕方ない、…だって小さいんだもん、紙が。
「……っと、じゃあ後はこことここだけで。そしたら終了ですねっ」
一通り修正をした後で振り向くと至近距離に会長の顔があったのでひどく驚いた。
「か、会長?」
「…ねえ、いのりは…僕の気持ち分かってるよね?」
真剣な表情で見詰められて、かと思えば名前で呼ばれて。
初めて呼ばれたことに顔を赤くしているどころじゃなかった。
「かいちょう…の、気持ち?」
下がろうにも、机が腰に当たってそれ以上下がれない。
「そう、僕の気持ち―――」
両手とも、机の上で会長の手に押さえつけられて。
「かい…」
先輩の顔がやけに近くなって会長の顔以外、何も見えなくなった気がした…
「あ、失礼」
けれどどこからかそんな声と共に、パタンと扉が静かに閉まる音がして。
はっとして会長が振り向いたときには、ドアはちょっと前と変わらないまま。
いつのまに誰か入り込んでいたのだろうか、会長室にはスペアの鍵以外誰も入れないのに。
ましてや扉を開けることも出来ない。
…一体誰が…しかも一瞬で中にも入らずに消えるなんて。
「…誰だったんだ?」
「さあ…」
そこまで会話したところで、会長がこちらを見た途端はっとした顔をして。
「あ、ごめんね」
「いえ…」
パッと手を放した後くるりとこちらに背を向けてしまった。
その後窓の方に行って外を見て何やら呟いていて。
……別にいつもの会長、けれどさっきはちょっと可笑しかった。
なんだったんだろ…?
「……」
唇に指をあてると、少し前まで感じていた会長の熱い吐息がまだ残っていた。

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