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まとまらないお話たち

第4章 4


自分は低血圧なのか、酷く朝は苦手なものでしかなかった。
しかも久しぶりの「ちゃんとした」朝食なのに。
小蝿がその周りにたかるプレートを持ってこられた時は正直不愉快だった。
どんなに清潔感のない店でもそれぐらいはちゃんとする…ましてや宿屋での朝食。
食事せずに部屋に戻って旅の仕度をし、さっさと宿屋を後にしようと思ったがまぁ戸は開けっ放しのようだし?
それに美味しいモノほど虫は集るものだ、上げた腰を下ろす。
……おいしいものほど……。
「………」
これを、おいしいモノと思えと?
サラダはサラダでも葉っぱがところどころ茶色に変色していて若干黄土色にも見えるそのカップに入った液体は…コーヒーだろう、多分。
そして一般的にはサンドイッチと呼ばれる、パンの間に『何か』がはさまれているこの料理は………なんだ、これ。
何をはさんでるんだ?
「(黒…いや、黄色い…?)」
上のパンをめくり中身を確認するとますます食欲を失ったのでパンを戻し、気にせず齧り付く。
直後ガリッという音が口内で聞こえたが、不思議と味は悪くはなかった。
ま、昨日外で見た時から宿屋の雰囲気まるごと旅人が来そうな気配はなかったし、ある程度覚悟して自分も昨日泊まったのだから…。
「(後で何か、情報聞こう…)」
うむ、元はそのために来たのだ。
いくら自由奔放な旅をしているとはいえ、何か目的がなければつまらないから。
人助けでも、魔物退治とかでもなんでもいい。
「…?」
ふ、と部屋の窓に小柄な影がびゅっと風を切るように速く通り過ぎた気がした。
かと思ったらバンッと激しい音を立てて出入り口の扉が開かれ。
これまた防犯意識の低い宿屋だな、と感じた。
まぁ部屋はともかく、飯がこれでは客足も遠のくか。
それでは盗みも入らないだろう。
でも一応泊まらせてもらっている分、その関連の者だったら一応は宿を護らせてもらうとしよう。
……肝心の宿主は奥の厨房にでも入っているのか、カウンターにさえその姿が見当たらないが。
「た、助けて下さい―――!」
しかし侵入者の顔を見た途端、椅子に立てかけてあった剣に伸ばしかけた手を止めた。
…女…いや、少女?
こんな朝早くに、しかもあんなに急いで助けを?
半ば呆然と荒く息を吐く少女を見詰める。
ぐるりと店内を見回して、ふと少女の目と自分の目が交差した瞬間―――なぜだか嫌な予感を感じた。

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