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まとまらないお話たち

第1章 1


「―――――由香…っ」
足を止めて、両手で顔を覆っていたことを後悔した。
出口まであと少しの所で背後から掛かった声の持ち主に腕を引かれ、そのまま向き合う。
私の顔を見て、彼は酷く悲しそうな顔をして。
「ごめん…」
良いよなんて返事出してないのに。
それとも私が抵抗しなかったからか。
いとも簡単に私の体を自分の方へ引き寄せた。
小さい頃悲しいことや怖い思いした時、お母さんに抱いてもらった時とは違う。
最初逢った時は背なんか私よりも低くて腕だってこんなに逞しくなかったはずなのに。
「…」
ああ、きっと。
今ここで嫌だと言っても、振り払うことなんて出来ないんだろう。
わかってた事だけど、悟はやっぱり男。
力で敵うハズがない。
……振り払うツモリなんて、ないけど。
「ごめん。ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんっ!!」
「(…ウルサイ…)そう何度も言わなくてもわかってるって」
「ほんっとうにごめんっ! 頼むから、言い訳言わせて。情けない奴だって笑われてもいい、顔腫れるぐらいビンタくらってもいいから、聞いてくれ。ことの発端はそもそも紀本が、」
「人のせいにするの?」
「っ………」
鼓膜に響く悟の胸の鼓動が、私の言葉により一層ドクドクと乱れる。
耳を澄ましてないと聴こえないようなか細い音が聴こえた。
3文字の音。
でも

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