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まとまらないお話たち

第6章 6


晴子に言ったように、ハル子は買った下着を中々装着しなかった。
と言うのも、体育教師高田の目があるせいもあるが。
「…あと少しで夏休みだね」
夏休みまでカウントダウン。
そう何日もしないで通知表を貰う日が着々と近付いている夏の日。
薄い雲が掛かっているせいか、あの告白された日よりも柔らかな日差しが差し込むこの日。
ハル子はいつものとおり、加藤と並んで帰宅路を歩いていた。
あの日以来、もう用もないので美術室には足を運んでいない。
部員でもないし、特に美術室に絵の道具を置いている訳ではないし。
「うん…」
返事を返しながら、ふとの加藤の名前はなんだったっけとハル子は考えた。
先輩はアレだから、と今まで苗字にさんをつけて呼んでいたのだが、そういえば名前はなんていうのだろう。
「そういえば…加藤さん、名前はなんていうの?」
話題が急に変わったせいか、一瞬彼はその言葉に歩調を止めて、え、という顔をした。
だが思い出したように「そういえば自己紹介してなかったね」と軽く笑い。
「俺の名前は、竜」
竜…ということは、R。ということは、竜・加藤。……R・K。
君村と一緒か…なぜかわからないが、その時ハル子の脳裏には君村の顔が過った。
「そっかぁ…私は、「ん、知ってるよ。滝本ハル子」
笑ってこちらを遮った彼に、アハハとハル子は笑った。
そういえば、彼は自分のことを名前で呼んでいたのだし、知らない筈がない。
「……竜、さんは、休み中も部活やるの?」
名前を知ったら、もう苗字で呼ぶなんて可笑しいだろう、そんなことを思って口にするとなんだか変な感じがした。
…でも呼び捨てなんて出来ないし、これでいいや、別に。
「んー、……ん、まぁ、そうだね。だからと言って宿題がない訳じゃないからキツイんだけどね」
苦笑する彼にそれはそうだろうな、とハル子は感じた。
彼女は特に部活は入っていないので帰宅部だから楽だが、卓球みたいにあまり活動のない、先生も手を入れていない部活も楽。
しかし野球や吹奏楽は結構有名な先生らしく、サッカー共々活動は忙しいらしい。
そんなことを考えながら、少しでも加藤が楽にならないかな、と思い。
「あ、じゃあ数学のプリントとかは一緒にやろうよ」

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