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まとまらないお話たち

第6章 6


美術室に行かないまでも、君村はハル子のクラスの担任だった。
だから顔を合わせないなんてことはなく、終業式が近い日はもう授業なんてないのだからほぼホームルームに近い教室では、担任の顔を見ることになる。
けれど自分には加藤がいるのだし、他の女生徒みたいにキャアキャア叫ばない。
そして他のクラスのように、ホームルーム=自習=すなわち、オリエンテーションの日になっているここ何日間かの間は、勿論のこと生徒が自由にゲームをしたりして楽しんでいる日で。
「先生ー」
「先生も遊ぼうよぉ」
「……あのなぁ」
俺は生徒達が楽しんでいるのを見ているだけでいい、と白けたことを言う男を必死に輪の中に入れようとしている友人を眺めつつ、ハル子はスケッチブックにペンを走らせていた。
隣で真央が「あんたまた描いてんのー」と冷めた目で見ているが無視。
変にトランプかなんかしたりして遊ぶより、絵を描くほうがよっぽど良いとハル子は思っていた。
その絵を描くことが過度に好きなせいで、一時期暗い、と小学生の頃ハル子は同級生に囁かれたことがあったが、真央とまりは彼女の気持ちをわかっているのでそんな周りから一目引かれて一人になっても、けしてハル子を1人にしようとしなかった。
「うん、私も静かなほうがいいし」
まりは独特の可愛い声でそう言い、ピッタリとハル子の隣についてはなれることはない。
真央は呆れた溜息を吐きつつ、それでも同じくはなれない。
2人…否、ハル子の気持ちをわかりながらも好意を寄せる男子などは彼女にも声をかけるが、3人とも一切無視。
「あ、じゃあさ、3人で何か描こうよ」
猫の絵を描きかけのまま、不意にハル子は手を止めそう言いページを捲り、新しいのにするとそれぞれ2人に鉛筆を貸し、自分も鉛筆を手に持った。
いくらなんでも2人に眺めさせているのもアレだ、と思ったのだ。
「…イイね、それっ」
えぇー、あたしが絵―!?と最初真央は声をあげていたがにっこり笑顔で賛成したまりに続くように、しぶしぶ頷いた。
「明日の時間はみんなで遊べばいいからさ」
さすがに2日も絵で潰すわけにはいかないので、…明日は通知表もあることだし、その後の打ち上げでは勿論こんなことはしない。
まぁ自分はクラスの打ち上げのほかにも、他クラスの…晴子のクラスのにも、誘われているが。

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