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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

「はい」
 心なしか蒼褪めていた安子の頬にかすかに赤みがさしているように見える。光を失った瞳にも僅かに力が戻っているように見えた。
 こんな自分でも、安子の心の哀しみを少しでも軽くすることができたのだろうか。もし、安子がいささかなりとも元気を、生きる力を取り戻してくれたというのであれば、公子にとって、これほど嬉しいことはない。
 公子がそう思ったときのことだった。
 几帳の外が俄に騒がしくなった。

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