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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 そんな公子を安子が訝しげに見つめていることにも気付かない。
「今日は珍しい客人が来ていると聞き、こうしてお伺いしましたよ」
 ほどなく几帳が捲られ、一人の公達が姿を見せた。蘇黄色の直衣には龍の意匠が全体的に金糸、銀糸で織り出されている。白皙の美貌は男性ながら妖しいまでに美しく、これほどに美しい男を公子はこれまで眼にしたことはなかった。

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